2024 年3月10日新建ハウジング掲載
壁面太陽光で
電気代のストレスを軽減
“普通の人”のため普及価格帯に注力
藤城建設[北海道札幌市]
冬季の日照量が少ない積雪地域や日本海側でも、太陽光発電の普及が進んでいる。4ブランドでエコハウスを展開する藤城建設は、屋根への積雪を考慮した壁面へのパネル設置で冬季でも発電量を確保し、暖房負荷を軽減する。普及価格帯のブランド「ゆきだるまのお家」でも壁面太陽光を推進し、“普通の人”が手に入れられるエコハウスを追求していく。
同社は2020 年にモデルハウスとして建設した「NORTH LAND PRIDE (ノースランドプライド、以下NLP)」で、初めて壁面太陽光を導入した。壁面に6.4kW、屋根に9.38kWを搭載し、1年ほど運用して発電量などのデータを収集した。
その結果、“壁付けのパネルだけでも冬季の暖房をまかなうことは可能”との結論を得たという。壁面太陽光は、周囲に積もった雪の照り返しでも発電するため実は効率が良い。NLPの場合、記録的な積雪量になった2022年の冬も、平均で1日あたり9.5kWhを発電した実績を有する。
現在、同社全体の太陽光発電搭載率は約3割。その1割で壁面太陽光が採用されている。
中には屋根よりも壁面の容量が多い住宅も。大まかにいって、壁面に3.5kW程度を搭載すれば日中、1kW前後の発電量を確保できるという。
ただ、暖房負荷もとりわけ大きい北海道で、壁面太陽光が一定量発電するとしても、冬にゼロエネルギーを実現するのは難しい。同社取締役の川内玄太さんは「冬は “燃費半分”でも、高額な電気代のストレスなく暮らせるようになる」と話す。少なくとも暖房(エアコン)程度はまかなえる上、年間を通じてみれば「夏はオフグリッドの実現可能性も大きく高まる」。
特別さよりも当たり前を
住環境を底上げしたい
ゆきだるまのお家は、高性能を担保しながらコストを意識した家づくりを展開するブランドだ。ウッドショックや資材高騰を経た今でも、付加断熱による断熱等級 6 相当外皮性能に太陽光発電を搭載した住宅で坪単価70万円前後、1棟あたり2300万~2500万円をキープしている。太陽光発電の導入費は補助金も活用して負担を軽減する。
同社でも 2 世帯住宅など高価格帯の受注は確かに増えているが、一方でローコストとも言える価格帯のブランドを維持しているのは「特別な1棟よりも当たり前の100 棟」を供給することを、自社の使命だと考えているから。「このクラスなら、例えば自社の社員など、“普通に働いている”人でも建てられる」と川内さんが言う通り、暖かく電気代の負担も少ない高性能住宅を、より多くの人に供給することに主眼を置く。
最近では、物価上昇の影響もあって「3000 万円台の住宅に手が届きにくくなった層からの受注が増加している」。また、より下の価格帯を検討していたが最終的に同社を選ぶ層もおり、受注は堅調だ。2024年の着工予定は、23年11月の時点で埋まったという。
今後は、冬の暖房としての薪ストーブのさらなる活用にも取り組む。高断熱化と太陽光により、エアコンでも暖房は十分だが「冬、火に当たるという行為がないのは、道民としてはちょっと寂しい。夏はエアコンで冷房し、冬は薪ストーブで火のある暮らしを送る一普通の人も、それぐらいは味わえるような家をつくりたい」と川内さん。もちろん価格は2000万円台を維持したい考えだ。
自社の前のバス停待合室を建て替え
同社は、事務所から道路を挟んだところにモデルハウスを保有しているが、その目の前 にあるバス停の待合室も、実は同社の設計・施工。モデルハウスの建築に合わせてつくったのだそうだ。
バス停自体は以前から同じ位置にあったが、以前はプレハブのような待合室だった。
モデルハウスの外観ともミスマッチで、老朽化も進んでいたため、バス停の所有者である北海道中央バスに話を持ち掛け、同社が建て替えて寄贈した。資材はモデルハウスの余りを使用した。
同社のある中沼地域は、バスが重要な市民の足となっているエリア。
「自社の目の前に、住民にとって大事なバス停がある。それを新しくするのも工務店としての地域貢献」(川内さん)。
できた当初は「なかなか中には入ってもらえなかった」そうだが、今はすっかり地域の人たちにもなじんでいるという。