BLOG

スタッフブログ

新建ハウジング「あたらしい工務店の教科書」に掲載されました

新建ハウジングより2024年6月30日に発行された、

「あたらしい工務店の教科書」に

株式会社藤城建設 常務取締役 川内玄太 (現:代表取締役社長)へ取材した内容が掲載されました!


工務店事例 新築
藤城建設(北海道札幌市)
常務取締役 川内玄太さん

PROFILE
所在地 北海道札幌市東区中沼町 33
設立 1992 年
社員数 43 人
年間受注棟数 新築 100 棟
平均単価 2500 万円(ゆきだるま のお家)

札幌市内を中心に、気候の厳しい北海道でもあらゆる人が豊かに暮らせる家をつくり続け
る「暮らしに『よりそう』中沼のほっこり工務店」。地域密着を大切にし、家づくり以外 の
地域貢献にも積極的に取り組んでいる

 

4 ブランドを展開しながら 「藤城建設」を最強ブランドとして確立

藤城建設では、価格帯やペルソナが全く異なる複数のブランドを展開しているが、 性能や
解体の仕様、担当する社員、職人は全く同じ。 規模のメリットを生かし、施工や仕入れを
合理化してコスパを高めている。

 

複数のブランドを同一仕様で展開する

同社が展開するブランドは、資材高騰下においても坪 70 万円台を実現する「ゆきだるまのお家」、同住宅をベースにした平屋専門の「平家製作所」、“北海道らしいロングライフ住宅”を標榜する「NORTH LAND PRIDE」、土地や分譲住宅を扱う「トチイエ」の 4 つ。

全ブランドの合計で年間 100 棟前後を供給している。

ただ、どのブランドであっても新住協の Q1 住宅 Lv.3 を達成することだけはマスト。

外皮の基本的な構成や、設備の仕様などは変わらない。

足元も基礎断熱ではなく床断熱とし、大引間充填とその上の根太間に付加断熱としている。

外壁の付加断熱材がフェノールフォームか XPS (ゆきだるまのお家。現在はフェノールフォームに統一)かなどの違いはあったが、寸法(厚み)は全く一緒。

むしろ、ゆきだるまのお家は 45mm 厚だったところを、わざと60mm 厚に変更したという経緯さえある。

常務取締役の川内玄太さんは、この変更を「コスパを最大限に高め、施工の手間を同一にするため」 だと説明する。

確かに安い資材を使えば価格を下げられるが、それ以上に大工の人工が重要。

「安い資材を探して㎡あたり 10 円安くするよりも、大工の稼働日を 1 日減らすほうが価格への影響が大きい」。

また、大工や協力業者も全ブランド同じで、変えたりはしない。同じ人が、同じように現場を繰り返すことで施工精度も効率も上がり、コストダウンの効果はより大きくなる。

同社のように年間棟数が多ければなおさらだ。

結果として「高価な資材を採用しても安上がりになり、他社に対し“安くて高性能” という強みが持てる」ことになる。

 

職人や業者に対しスケールメリットで交渉する

棟数によるスケールメリットは仕入れ価格上も有利だ。

「それなりの棟数をやっていると価格交渉にも応じてくれる」と川内さん。

直近では、ウッドショックによる木材の価格上昇が落ち着いたのを見計らって、プレカット事業者に値下げ交渉を行った。

昨年度は過去最高の利益を達成しており、“同じ仕様で一定数量をつくる”ことの効果は確かに表れている。

職人・協力業者に対しても、協力会で「健全な価格競争」を促している。同社の受注が好調で、2024 年内の着工は 23 年 11 月時点で達成しており、他社からの発注が減った大工が同社の仕事を請けるようになったため、人手も充足している。

新しい大工には、生活するのに十分な収入が得られるだけの仕事をきちんと割り振る。

すると「お金に対する不満が小さく」なって、自社に囲い込むことができる。

もちろん、周囲の状況を見ながら手間賃は随時上げており、大工を買いたたくようなことはしない。

一方で「弊社のペース、要求についてこさせるためにも腕を磨いてもらわなくてはならない」ので、競争は避けられない、とも。

 

どのブランドも全社一丸となって対応

4 つのブランドは、仕様や職人だけではなく担当する社員も同じ。

ブランドごとに専用のウェブサイトや問い合わせ用電話番号はあるが、実際は部署や担当者があるわけではなく、“藤城建設”が一丸となって全てのブランドを運用し、それぞれの顧客に対応している。

1 社 1 ブランドを貫けば、より確固たるブランドを構築できる。

しかし川内さんは「弊社は工務店。工務店は、どんなお客様にも住まいを提供できることが価値になる」と考えている。

例えば高級路線を走る工務店に、予算が限られている人はコンタクトしづらい。

住まいで困っている地域の人々を「お助け」するには「家づくりの入口は広く」あらねばならない。

そもそも「ひとつのブランドを貫ける(だけの力を持っている) 工務店は一 握り」に過ぎず、全ての工務店の生き残り策にはなりづらい。

同社を認知するきっかけはどのブランドでも全く問題はない。

時には「入口となるブランドと出口になるブランドが異なってしまった」顧客もいるが、全ブランド同じスタッフだからこそ、要望に応じて自由自在に、顧客のためになる出口へと案内できるのだ。

おしなべて性能の底上げが進む中「検討の初期段階でふるい落とされないだけの性能」は必須。

しかし川内さんは「お客様から金額やスペックを比較されたらその時点で負け」だと話す。

競合他社との性能, 価格競争に巻き込まれず、「藤城建設(または担当者個人)に建ててほしい”と言われること自体が自社のブランディング」だとし、社内ではなく顧客に向き合っていくことこそが工務店の神髄だと説く。

リノベを訴求しつつ 新築受注とのバランスも取る

今は好調でも、昨今の住宅市場の状況を考えれば安穏とはしていられない。

川内さんも「(新築は)下降する一方の市場。好調なうちに次の打ち手を考え、実践しなくてはならない」と話す。

同社にとっての新しい打ち手、それはリノベーションだ。

といっても新たな事業というわけではなく「今まではただ新築が目立っていただけ。ずっとやっていたことを改めて訴求する」。

既に札幌市郊外にあった中古住宅を取得し、年内にはリノベーションのモデルハウスとしてオープンする。

リノベーションでも新築と同様、高断熱・耐震・太陽光発電は標準。競合も増えつつあるので「他社よりも圧倒的に安い金額でできなければ、他社と同じだと見られてしまう」という悩みもある。

しかし、 新築でコスト重視のブランド(ゆきだるまのお家、 平家製作所)を持っている強みを生かし「リノベーションでゆきだるまのお家を脅かすぐらいのつもりで」事業としての確立を目指す。

ただ、リノベーションが好調過ぎて新築の受注が落ち込むのも問題。

そこで 1 年間だけ、各ブランドで規格化して価格も統一した「ライトプラン」を用意する。

価格上昇が続く今の時流を考慮し“藤城建設も高くなってきた”というイメージを打破していく。

 

COMMENT

新住協の Q1 住宅 Lv.3 を達成することが弊社 の家づくりにとっては不可欠。

そのうえでコスパを高めるには、資材を 10 円/㎡安くするよりも、大工の工程を 1 日減らすほうが効果は大きい。

年間 100 棟もやっていると、どの現場でも同じことをすることでどんどん効率が良くなり、高い資材を使っても価格を抑えられる。

また、弊社はあくまで工務店なので、どんなお客様であっても良質な住宅を提供したい。

ブランドを複数持って入口を広げておき、地域の皆様の家づくりをお助けするのが弊社の役目だ。

時代の変化には対応しながら「工務店に生きる」を徹底する

打ち手 1

仕様はひとつだけ

施工を効率化しコストダウン

全てのブランドで Q1 住宅 Lv.3 の達成を必須とし、仕様・寸法を統一している。

例えば付加断熱材は全て 60 厚に。

統一するためにわざと厚みを増す仕様変更を行ったこともある。

施工の手間を同一にして大工工事の効率を高め、人工を減らすためだ。

年間の新築棟数が100 棟になるとその効果はさらに大きくなり、価格で他社に対する競争力が持てる。

 

打ち手 2
どのブランドも 「藤城建設」として対応

ブランドごとに部署があるわけではなく、同一のスタッフが担当している。

どんな層であっても同社にコンタクトしやすいよう、間口は広くしておき、接客の過程で最適な選択肢(ブランド)へと誘導していく。

普及価格帯から高級ラインへの誘導、あるいはその逆になることも。

注文住宅中心の工務店として、顧客に寄り添ってきたスタンスを貫き、最適な住まいを届ける。